3家庭を迎えて上海府移住の本音を探る
2月9日、AGハウスで座談会を開催しました。
上海府地区はどのようなところなのかを今一度確認するためにも、上海府地区外から転入し居住している方をゲストに迎えて本音を聞き出すイベントです。
地域内で暮らしていて当たり前になっていて気づかない良い部分、ダメな部分等をざっくばらんにお話を聞かせてもらう機会としました。
ゲストは3家庭で、それぞれご夫婦とお子さんが二人ずつという偶然にも3組とも同じ家族構成です。祖父母は同居していません。
- ご家族A 夫妻・乳幼児2人(ご夫婦で参加)
- ご家族B 夫妻・中高生2人(旦那さんが参加)
- ご家族C 夫妻・小学生と幼児(奥さんが参加)
あまり堅苦しい雰囲気にしたくなかったので、メンバーによる楽しい飾り付けとBGMを流して和やかな雰囲気の演出を心掛けたものの、ゲストにしてみれば完全アウェーな状況で最初はやや緊張した空気になってしまいました。
そもそも最初のあいさつの時点で代表が緊張している始末…

女子メンバー中心に飾り付けで準備中

代表のあいさつのせいか、初めは少し緊張気味…
そんな中でも話が進んでいくと、時折笑い声が聞こえたりと、ゲストの方からも飾らない生の声が聞こえてくるようになりました。
上海府へ来た理由
- 先に親が近くに移住していたので、それを追った形で
- 海と山があるところで移住先を探していた
- 仕事の関係で赴任
理由はそれぞれですが、積極的に田舎暮しを望んで来られたのは一家庭だけでした。逆に、それ以外で田舎に転入することがあるのかと気付かされました。
上海府に住んでみて
- 思っていたより周りの人が良くしてくれた
- 都会と全然違い、空気が美味しい(ぜんそくや花粉症が改善した)
- 周りの住人から季節の野菜や海の幸などをいただけて嬉しい
- 海が目の前で夕日がきれい
- 冬場、家が飛んで行きそうな風に驚いた
- 買い物などではお店から地理的な距離を感じた
- 人足(村の共同作業等)の制度に驚いた
前もってある程度の情報があった方、あまり無い方といらっしゃいました。
新潟市内と比べても空気が良いという言葉は嬉しいお話でした。
農産物のおすそわけの文化など、田舎ならではの近所付き合いが感じられる地域です。
すぐ近くに海がある事で、景色や自然環境に特色があります。水平線からオレンジに染まる夕日は上海府の最高の景色です。

時間が経つと、楽しく笑いながらお話できました。
冬の積雪は少なく除雪もほとんど不要です。その反面、海風が吹き荒れます。住んでいると普通になりますが、怖いくらいの風と言えばそのレベルかもしれません。
仕事や買い物のために車が必要で、お店まで距離があるのはどこの田舎も共通の課題でしょうか。
人足とは集落単位で行う共同作業のことで、浜の清掃や草刈り、今もやっている所があるのか分かりませんが、以前は神社の冬囲いなどもありました。一軒から一人参加必須で、どうしても参加できない場合は不参加料を負担します。
全戸参加の人足は、集落によって年に1〜2回しか行わない場所もありますが、多い集落では1〜2ヶ月に1回程度あるようです。こうした強制で全員参加の人足は、これから進む集落規模の縮小の中で、今後の在り方が問われていくと思います。
仕事面
- 生活費も下がるが、給与面では首都圏に比べて全然安い
- 当初は新潟市まで通っていたが、今はネットを活用している
- 年齢的に正社員を探すとなかなか見つからない
- 半ば仕事とプライベートが一緒
移住者であれ、もともと住んでいる人間であれ、上海府地区内で仕事を探すのは困難なので多くは村上市街地に働きに出ています。やはり収入の面では首都圏に比べると相当不利です。なぜ同じ日本で同じ仕事をしていても地域によってこれほど変わってくるのでしょうか??
そんな中でインターネットを使い在宅で仕事をしている方もおり、一筋の光明が差したようにも感じました。
地域との関わり方
- みなさんから季節ごとの海の幸、山の幸をもらえてありがたい。最初はお返しをしたら逆に怒られた(朝玄関を開けると差出人不明の野菜が置いてあることも…)
- 仕事と子供の事もあり、あまり関わりを持てていない
- 住みにくいと思うところはない
- 良い事を言う人も、悪い事を言う人も居るので悪い事は気にしない
- 消防団に入った事で地域との関わりが増えた
- 若い人との交流が無い。集落の集まりには一世帯から代表が一人(大抵は年配者)が出席するため、そうした場では若い人に会う機会が無い
- 逆に地域からはどう見られているのかは気になる
- もう少し溶け込みたいとは思うが、仕事やプライベートを優先させると難しい面もある
誰が置いていったのか分からないおすそ分けがあるのは、上海府あるあるです。
当初はだいぶ困惑したようで、誰からの差し入れか分かる時は丁寧なお返しをしたものの、逆に怒られてしまったそうです。
この辺りの付き合い方は最初戸惑うのかもしれません。
あまり良いイメージが無いんじゃないかと思われる消防団が、地域とのつながりを持つ為に大きな役目をしていることが意外でした。消防団が地域コミュニティーの入り口になったようです。
子育てについて
- 地域の行事に参加したら意外と多くの子どもたちが居た事を知った
- 移住当初は地域に子どもが来たことだけで喜んでもらえた
- 子ども連れで行事に参加すると迷惑を掛けそうで気が引ける
- 子どもを遊ばせられる公園が無い
- 市立の中学はスクールバスがあるのに県立学校はバスが無い
- 子どもが伸び伸び育つように感じる
子育て環境については日本全国で大きな課題となっています。
公園施設やスクールバスの問題などは集落単位でどうにかできるような問題でも無く、行政の課題ではありますが、特に子どもたちを遊ばせるための施設が整った公園が市内に無いというのは村上市民の間では多く出る話です。
田舎特有の地域で子どもを見守るような雰囲気が、移住者に対してもあるかどうかまで話を深堀りすることはできませんでした。
行事の中では、参加した子どもたちが地域の人に声を掛けられている姿は目にします。
一方で田舎でも近所の人に無関心、といった人も増えたように感じます。
移住前の地域との関わりについて
- 地域との関わりはほとんど無かった
- お祭りを中心としたつながりがあった
- 町内の子ども会があった
お祭りや子どもを通じたコミュニティーがあったようです。
海府地区で行われているような地域を上げての運動会や、文化祭等は無かったようです。
困っていること
- 大手光回線がつながらないことに憤りを覚えた
- 初めての冬で波と強風に驚いた
- 特に海が近いので塩害がひどい(車・エアコン室外機・サッシ等)
- 冬の間は買い物を控えるので蓄えが必要
- 親戚が居ないのでいざという時に不安
- 公共交通機関が無いので車は一人一台必要
村上市内でNTTの光回線がつながらないのは、恐らく大栗田と上海府地区だけです。
上海府では唯一、(株)新潟通信サービスで光回線を開設することができます。
実は、当日までこの情報を知らずに高額なモバイルの無制限プランを利用されていたゲストの方もいました。
今の御時世インターネットは欠かすことの出来ない重要なインフラで、移住者にとってネット環境の優劣は大きな要件のひとつとなるものです。
そもそも公的な事業として全世帯に光回線の敷設を行った合併前の町村に対して、旧村上市がそれを行わなかった結果が大栗田と上海府地区だけがNTTの光回線から取り残された現状につながっていると考えます。
上海府の光回線について、村上市としては問い合わせがあれば答える程度のスタンスのようですが、もう少ししっかりとした情報提供を望みます。

徐々に切り込んだ話も?
冬の波と風、それに伴う塩害は海沿いとしては致し方ないところに思えます。ただ、お話を聞くと住まいが特に影響を受ける場所のようで、上海府でも地形や条件によって少し違いがあるのかなと感じました。
数年に一度クラスの台風や低気圧では、国道345号が通行止めになる事もありました。
近くに親類が居ない、わがままを聞いてくれる人、無条件で信頼してくれる人などが居ないということは不安だと思います。
リアルな話だと、不動産等の契約時に必要な保証人になってくれる人が居ないというような話題も上がりました。
田舎に共通して言えることが公共交通機関の少なさ。JRの駅を2駅抱えている上海府地区で公共交通が無いと言われる現状って…
その他
- 9〜10月にイカ釣りができて良い!
- 小学校跡地の有効活用が望まれる
- 柏尾のイタリアンレストランに行くのが楽しみ
- 飲み会は無いし、あまり誘われない
- 大海は初めて食べた
- 習い事ができる場所がほしい
話題に上がったお話と個人的な感想を集約すると上記のようになりました。
自然環境の良さ、豊かさ、集落住人たちとの交流が持てる事などがポジティブな感想でした。
ネガティブな感想としては、逆に自然環境の厳しさや集落の付き合いが少し面倒に感じられる事があるなど、どちらにしても諸刃の剣のような部分があるようです。
印象に残ったのが、消防団が地域コミュニティーへの入り口としての役割を担っていた事です。
交流会のような会合では、どちらの立場にしても誘いづらい、入りづらいなどがありますが、消防団は、地域のために割り切って?入団してもらうものなので、具体的に動きやすい組織と言えるかもしれません。
今回は若い世代を対象としましたので、公共交通機関の少なさや買い物の困難さなどはそこまで深刻な問題としてクローズアップはされませんでしたが、これからの上海府が抱える大きな課題を改めて感じました。
実は、もっとダメ出しが来ると思って覚悟していたのですが、内容的には概ね好感を持ってもらっているようで少し安心しました。(もちろんゲストの方が気を使ったという面もあると思いますが…)
とは言え「どんな田舎でも住めば都」で落ち着かせるつもりはありません。
外側からの目線、内側からの目線、それぞれの意識の違いや課題を明らかにし、しっかりと向き合い、解決に向けて歩んでいくことが上海府の未来へつながるものと思いますし、今回のお話を、地域を巻き込むためのオレモオメモの活動の中にも生かしていきたいと思っています。

改装中の囲炉裏の間にて
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!

お礼に1,000AGを贈呈!
ちなみに参加された方には、謎の妄想通貨1,000AGが贈呈されました!