雑記

婆ちゃん達がかよった段丘上の畑

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上海府地区は日本海と蒲萄山塊に挟まれた、ごく細い平地に居住地域がある。

居住地域を除いた平地には古くから農地が作られてきた。とは言っても、その面積は山辺里や岩船の広大な水田から比べると小さく、耕地整理後でも1反に満たない田んぼも多い。

江戸時代、新田開発は領主にとっても利益に繋がる事だったから積極的に推奨されたが、この上海府地区は現在に至るまでそれほど農地の面積が増える事が無かったという。農地として利用できそうな場所は初期の段階であらかた利用され尽くしていたからだ。

農地の不足を補う為に山上にも田畑が作られた。どの集落でも背後の標高50メートル程の段丘上が小規模ながら平地になっている。そこに畑や、水を引き込める場所には田んぼも作られていた。

山上のなので機械は入らず、全てが手作業。場所によっては水もままならないので雨水を貯めて利用した。

畑へ通じる道は集落外の人にはあまり知られていない。昭和の終わり頃までは山上の畑は子どもたちの良い遊び場だった。長い年月歩き込まれてU字型に掘られた道、両側から覆いかぶさった木々の葉の間を抜けて行くと畑へたどりつく。ちょっとした冒険気分。

農地の端から見る風景が好きだった。段丘の先に立つと足元には自分が住んでいる集落と田んぼ、線路。今まで生きてきたちっぽけな世界があって、その先には青い空と海が果てしなく見渡せた。

冒険気分は少し害されたが、畑にはいつもどこかの婆ちゃんが畑仕事をしていた。「どごいがんだ?きよつけれよぉ…」そんな、のどかなやり取りもあったが、冒険気分を害されないためにも婆ちゃんたちを未知の現地人として設定したこともある。

畑へ通じる道

段丘上の畑へ通じる道

婆ちゃん達はナスやイモ、カボチャなどを作るため50メートルの標高差をものともせずクワを担いで毎日のように山の上に通う。腰を曲げながらも、畑にたどり着くとしっかりとした足取りで土を耕した。

採れた野菜は近所や親戚に配る。はっきり言って見た目は良くない。どうして自分で食べるわけでも無いのにそこまでして畑仕事をするのだろう…と思っていた。

きっと婆ちゃんの婆ちゃん、そのまた婆ちゃんも、そうしてきた。先代から受け継がれてきた土地を大事に、大事に利用してきた。

これほど農地の少ない土地だから、時にはこの猫の額ほどの土地の利用を巡って争いも起こった。畑には何世代にも渡る婆ちゃんの汗が染み込んでいる。

婆ちゃんたちは受け継がれた土地の大切さを知っている。土地の大切さを知っているから、その土地で作った野菜も余ったからと簡単に捨てたりしない。

今、山上の畑を耕す婆ちゃんは居なくなった。田畑だったという事すら分からない程に自然に還っている場所もある。時代の流れの中で仕方の無い事かもしれない。

私も上海府を離れていた時期があった。実家に顔を出した際に近所の婆ちゃんが帰り際に出てきて持たせてくれたトマトを今でも覚えている。色も形も良くはない。でも、上海府の大事な土地と水で育てられたトマトは確かに故郷の味がした。

畑の跡

すっかり草木に覆われた畑の跡

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